Seunghoon Choi

答えがある仕事から置き換わる:AIが仕事を奪う第1〜5段階

翻訳、コーディング、分析、世間の反応予測のように、結果を確かめられる仕事が真っ先にAIへ渡っていく。

目次

AIが先に置き換える仕事、答えを確かめやすい知識労働から自動化される

正解が決まっている業務は、担当者の自尊心とは関係なく先に自動化の対象になる。

AIが自分の仕事を奪うのか。この問いに答えるには、まず順序を見る必要があります。AIは手当たり次第に仕事を奪っていくわけではありません。先に置き換えられる仕事があり、ずっと後になってようやく代替圧力を受ける仕事があります。そのなかで真っ先に代替圧力を受けるのは、答えを確かめやすい仕事です。翻訳が正しいか、コードが動くか、計算が合っているか、診断が当たっていたか、広告のコピーがクリックを呼んだか。こうした仕事は結果を確かめられます。結果を確かめられれば点数をつけられて、点数をつけられればAIは速く学びます。

人は一度間違えると時間を失い、やる気も失い、学び直すのに時間がかかります。でもAIは違います。何度も試して、間違えれば直して、また試します。採点の基準がはっきりしているほど、AIは速く人間に追いつき、ある瞬間から人間より安く速く同じ仕事をこなします。今回の記事では、AIが仕事を奪っていく最初の5つの段階を扱います。第1段階は、答えが決まっている業務です。第2段階は、専門家の分析です。第3段階は、世間の反応を予測する仕事です。第4段階は、複数の工程をつないで処理する仕事です。第5段階は、人がチェックするとかえって遅くなる仕事です。

ここまではすべて同じ方向に動きます。答えを作り、確かめ、直し、また処理する仕事が、どんどんAIへ渡っていきます。

第1段階、答えが決まっている業務

真っ先に置き換えられるのは、答えが比較的決まっている業務です。翻訳、要約、基本的なコーディング、書式が決まった報告書、単純な計算、繰り返しの文書作成といった仕事です。こうした仕事は入力と出力が比較的はっきりしています。なぜ先に置き換えられるのか。正しいか間違いかを確かめやすいからです。

翻訳は原文と比べられます。コードは実行してみられます。計算は答え合わせができます。要約は原文から大事な内容が抜けていないか確かめられます。書式の決まった報告書は、必要な項目が入っているか見られます。

こうした業務はAIが練習しやすいものです。正解に近づいたかどうかをすぐ確かめられるからです。だから一度十分に上手くなれば、人より安く速くなります。ここで人の価値がすべて消えるわけではありません。でも「決まった形式に合わせて速く作ってくれる人」の価値は急速に下がります。以前は翻訳を速くする力、文書を速くまとめる力、コードを速く打ち出す力が、はっきりした強みでした。今やその力は、当たり前の基準値に近づいています。

この段階で先に消えるのは、創造性そのものではありません。決まった答えを速く生産する役割です。

第2段階、専門家の分析

次は専門家の分析です。診断、予測、リスク分析、設計レビュー、データ解釈といった仕事です。表向きは高度な専門職に見えますが、その多くはパターン認識と判断の繰り返しです。

医師が画像を見て病変を探す。弁護士が判例を検討する。エンジニアがデータを見て異常の兆候をつかむ。アナリストが数字を見て方向を予測する。

こうした仕事は、長く学んだ人がやる仕事です。だから安全に見えます。でもAIの立場からは、必ずしもそうではありません。過去の事例が多く、入力資料が整理されていて、後から結果を確かめられる分野なら、AIは速く追いついてきます。診断が当たっていたか、予測が当たっていたか、設計が失敗したか、リスクが実際に表面化したかは、時間がたてば確かめられるからです。つまり専門家の分析も、答えが収束していく領域では置き換えの圧力を受けます。

長く勉強した人が無意味になるという意味ではありません。ただ「分析が一番うまい人」という立場だけでは、もう安全ではないということです。これから専門家にとってより大事になるのは、分析の結果をただ出す力ではありません。どの問題を解くべきかを選び、AIが出した分析を現実の文脈に合わせて読み解き、間違えたときに責任を取れる判断をする力です。AIが分析を肩代わりするほど、人は分析者から、責任者と問題設定者へと押し上げられていきます。

第3段階、世間の反応を予測する仕事

三つ目は、世間の反応を予測する仕事です。ここで気をつけたいことがあります。AIが人の心を魔法のように読むという意味ではありません。AIが一人ひとりの深い欲望を完璧に理解するという意味でもありません。AIが得意なのは、人々が実際に残した行動データを見て、次の反応を統計的に予測する仕事です。

どの見出しを押したか、どの文章で離れたか、どの商品を買ったか、どんな言い方に反応したか、どの動画で長くとどまったか。人ひとりが一生かけても観察できない規模の行動データを、AIは見ます。だから先に置き換えられるのは「人の心を深く理解する仕事」ではありません。世間が何を押すか、何を買うか、どこで離れるかを予測していた仕事です。広告のコピーを選び、見出しとサムネイルを比べ、顧客を分け、おすすめリストを組み、価格やプロモーションへの反応を予測する仕事は、速くAIへ渡っていきます。以前はマーケターや企画者の勘でやっていた仕事を、AIがデータで処理します。

この段階で消えるのは「自分は人々が何を好むか勘でわかる」という立場です。ただし限界もはっきりしています。統計的によく当てることと、一人の人にぴったり合った100点のサービスを提供することは、別の問題です。AIが人々の食の好みのデータをたくさん知っているからといって、実際に味を感じるわけではありません。ある人が今日どんな気分か、いまどんな食感や香りを求めているか、何を食べたら本当に満足するかは、いまだに難しいのです。

ですから、この段階で置き換えられるのは、一人の人を完全に理解する力ではありません。多くの人の反応を予測し、その予測でコンテンツや広告やおすすめを最適化する仕事です。

世間の反応は、答えが一つにきれいに決まるわけではありません。でもクリック率、購入率、視聴時間、離脱率のように、結果が絶えずフィードバックされます。だから答えがだんだん収束していきます。収束した瞬間、AIは強くなります。

答えがある仕事から置き換わる:AIが仕事を奪う第1〜5段階

クリック行動を点数として記録できる業務では、AIは反復実験に必要なデータを早く得られる。

第4段階、複数の工程をつないで処理する仕事

初期のAIは小さなかけらを引き受けていました。文章一つ、コード一行、要約一つ。でもだんだんAIは、仕事を最初から最後まで処理するようになります。目標を与えれば計画を立て、必要な資料を探し、下書きを作り、修正し、結果を出します。この段階では、AIは単に答えを出す道具ではなく、いくつもの工程をつないで処理する実行者になります。

以前は人が仕事を切り分けていました。資料探し、整理、文書作成、書式合わせ、提出、次の工程への引き継ぎ。今やAIはこの流れをまとめて処理できます。会社のなかで見ると、中間の実務が減ります。人が直接処理していた小さな工程がまとめられて、自動化されます。人は「何をするか」と「どんな基準で終わったとみなすか」を決める側へ移っていきます。「この文章を書いて」から「この目標を達成して」へ変わる瞬間です。

この変化が怖い理由は、一つ二つの業務が消えるからではありません。いくつもの小さな業務を束ねていた人の役割が減る可能性があるからです。資料を探し、整理し、書式に入れ、報告できる形にする中間処理の業務が減ります。もちろんすべての仕事をAIが完全に終えられるわけではありません。権限、セキュリティ、責任、組織の文脈、最終承認の問題は残ります。でも仕事を回す中間段階の人の数は、減っていく可能性があります。

第5段階、人がチェックするとかえって遅くなる仕事

最初は人がAIの結果をチェックします。当然です。AIは間違えることがあるからです。でもある種の仕事では、時間がたつにつれて状況が変わります。AIの誤り率が人より低くなり、間違えても簡単に元へ戻せる仕事なら、人が毎回チェックすることは安全装置ではなく、ボトルネックになります。たとえば繰り返しの分類、単純な承認、危険度の低い作業の自動処理といった仕事です。結果が間違っているかすぐ確かめられて、間違えても大きな被害なく元へ戻せるなら、人のチェックはだんだん減っていきます。

このとき人は、より安全にする存在ではなく、速度を遅らせる存在になりかねません。ほぼ全部正しい成果物を人が毎回のぞき込むと、問題ないものをわざわざ直したり、仕事を遅らせたり、なかった誤りを新たに入れたりすることがあります。だから「もう一度見る人」という立場が減ります。でもここにも大事な但し書きがあります。

第5段階は、正確さと元へ戻せることが肝心な仕事に限られます。AIのほうが正確で、間違えても復旧が簡単な仕事でだけ、人のチェックが減ります。責任が大きい仕事は別です。一度間違えると人がけがをしたり、大金が飛んだり、法的責任が生じたり、組織の信頼が崩れる仕事では、人は簡単には抜けません。つまり消えるのは、すべての監督者ではありません。「正確さだけを確かめていたチェック担当者」が先に消えます。

責任を取る人、何が大事かを判断する人、実際の被害を引き受けて最終決定を下す人は、後の段階まで残ります。だから第5段階の核心はこうです。AIが人より間違えにくく、間違えても簡単に元へ戻せるなら、人のチェックは安全装置ではなくコストになります。

その瞬間、チェック担当者の立場は、静かに減っていきます。

答えを確かめやすい仕事は、なぜ先に自動化されるのか

第1段階から第5段階までを一行でまとめると、こうなります。答えがある仕事は先に置き換えられる。答えがあるというのは、答えが一つだという意味だけではありません。結果を確かめられて、フィードバックを与えられて、時間がたつにつれてより良い答えの方向が絞り込まれていく仕事を意味します。

翻訳、要約、コーディング、診断、分析、おすすめ、広告、世間の反応予測、繰り返しの承認、低リスクの自動処理。こうした仕事は、すべて程度の差はあれ答えが収束します。答えが収束すれば、AIは繰り返し学びます。繰り返し学べば、安く速くなります。安く速くなれば、人の立場は減ります。人が残る立場は別の場所へ移ります。問題を選ぶ仕事、責任を取る仕事、現実の文脈を読む仕事、権限を持つ仕事、間違えたときに損害を引き受ける仕事です。

だから「自分は仕事ができる」だけでは足りません。その仕事が答えの収束する仕事なら、できる人から先にAIと比べられます。そしてAIが十分に安く速くなれば、できる人の価値も下がります。

次回へ

ここまでが、AIが仕事を奪っていく前半の区間です。まず答えを確かめやすい業務が自動化されます。次に専門家の分析、世間の反応を予測する仕事、複数の工程をつないで処理する仕事が順番に自動化されます。最後に、一部の領域では、人がもう一度見るチェック担当者の立場も減ります。すると、残る問いは自然に出てきます。体を使う仕事は安全だろうか。手先の器用さや現場の感覚は、AIが簡単には奪えないのではないか。次回の記事では第6〜8段階を見ます。繰り返しの肉体労働、手先の器用さと現場の試行錯誤、そして答えのない判断と感覚が、どう代替圧力を受けるのかを見ていきましょう。